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2018.11.06

(2)『産後うつ』を救うもの(後編)全5回シリーズ

地域の母子担当保健師は、
マンションにこもりっきりで1人で赤ちゃんに向かっている
ちょっと気になるママには、
不安を少しでも楽にしてあげたい一心で
ちょくちょく電話をかけたり、家庭訪問したりします。

第1子の出産後3週間目、
保健福祉センターの保健師さんから
産後訪問いかがでしょうか?の電話に
わたしは必要以上に元気な声で
「大丈夫です」と断りました。

4ヶ月健診の問診票では
産後うつチェックシートの記入をしましたが、
正直な答えというより
「こうありたい」とか
「わたしはこうであるはず」
『よいママ』を演じるような背伸びをした回答をしました。

当時のわたしのように
強がってSOSを出さない(出せない)ママがいるわけです。

支援者は、ママの表面上の言動だけで判断するのではなく、
本当の心理も鋭く見透かして
気づいてあげられるだけのスキルが必要です。

隠れてひっそりと発症している産後うつ、

もしくはわたしのように
産後うつを発症しやすいリスクのある予備軍を
いかに見逃さないかがカギになります。

産後うつを発症しやすいリスクとは、

誰かに頼ったり助けを求めることが苦手な
完璧主義者、生真面目など性格
→わたしのことです。

過去にうつ病やパニック障害などの既往
→これは当てはまらないかな。

パパの帰りが遅く、育児参加の少ない
ワンオペ育児
→まさしくわたしでした。

しっくりこない実家との人間関係
→はい、わたしです。

そして、
過去に仕事でキャリアを積んできた人も
産後うつになりやすいと言われています。

なぜなら、仕事はがんばればがんばるだけ結果が出ます。
計画を立てて、計画通りに仕事を進めていくことも
できます。

それに比べ子育ては、
がんばっても思い通りにはいかないことばかりです。
計画なんて、立てたところでほとんど覆され、
予定通りにサクサク進むことなど、ほとんどないからです。

そんなママにとって
行政の親切はかえって負担になる場合もあるんですよね。

電話で喋っている時間も赤ちゃんのことが気になる。
電話で授乳時間や家事など、時間計画を邪魔されたくない。
電話の途中で泣かれたらどうしよう・・・とか、
ましてや、赤ちゃんが眠っているときに
電話の音が鳴って起こされたら腹立たしい。

つまり、予定外の電話によって
ママの1日の段取りが狂うわけです。

そして、

『監視が必要なイエローカードの危険人物』

自分が世間にダメママだと判断されることを
認めたくない気持ちや恐怖感。

いろんな気持ちがぐちゃぐちゃに交錯して

産後のサポートのために、
よかれとかかってきた電話が
ママのストレスとなり、思わず無視したり、
居留守を使ってしまうこともあるのが
リアルな産後の子育ての現場です。

実際あのときのわたしは、
〝わたし〟のことをろくに知りもしない
信頼関係のかけらもない見知らぬ保健師に
単発的に電話や訪問をされても、
なんのサポートにもなりませんでした。

新しい生活と子育てに戸惑い、悩み、
体も出産のダメージから回復しきっていない退院後から
子どもが1歳の誕生日を迎えるまでの怒涛の1年間、

つまり、産後うつのハイリスク時期に、
継続的で、しっかりと機能している
公的サービスはほぼぼないのが現状ではないでしょうか。

産後、ママたちは、社会から放り出されたような
孤独感に悩む暗黒の世界へ突入していきます。
その辛さは想像以上です。

わたしは、今でこそ子だくさんママになりましたが、
第1子の産後、退院するときの
なんともいえない重責感は今でもはっきり覚えています。

絶対に弱音は吐かず
優等生のふりをして
『余裕』をアピールしながら入院中を過ごし、
そのまま仮面をかぶったまま退院しました。

「退院おめでとうございます」

あの言葉は
まったく嬉しくなかったです。

「この瞬間から、あなたはママとして
責任を持ってこの子を育ててくださいね。
全責任はあなたにあるんだからね。
心して挑んでね」

「おめでとう」の裏側に
こんな言葉が隠れているように感じ、

『ママは強くあるべき』
を、あおられたように聞こえました。
それは想像以上に大きなプレッシャーでした。

「おめでとう」の言葉を
これほどまでにひねくれて受け取ったことは
これまであっただろうか?と思いますが、

課せられた『子育て』という使命に燃えるどころか
崖っぷちで逆さ吊りにされた気分になりました。
そしてどんどん自分を追い詰めていきました。

でも、わたしは助産師だから。
小児科病棟やNICUでも働いていたから。
育児支援者の立場だから。

子育てで行き詰まるなんてことも、
誰かの助けを求めることも、
自分のなかで決してあってはならないことでした。

負けず嫌いで頑固。
プライドのかたまりだった24歳のわたし。
所詮、ママ1年生のはずなのに。

里帰りでお産をしましたが、
両親にも本当の自分をさらけ出すことができず、
強く、しっかり者を演じ続けました。

完全に「がんばりすぎ」です。
自分を追い込む行為は
バリバリの産後うつ予備軍だったと思います。

だからわたしは、
ママたちの駆け込み寺、
助産院ばぶばぶを作りました。

辛いとき、苦しいとき、
いつでも気持ちをぶつけられる場所。
ここでなら、丸裸の自分になれる!って思える場所。

そんな場所を、作りたいと思ったんです。

今でこそ、産後ケアの必要性がようやく
注目されるようになり、
大阪市では、数年前に助産師会館に『産後ケアセンター』が
設立されましたが、

ばぶばぶを開院した2007年頃は
子どもの虐待は問題にされていたけれど、
そこに産後うつが大きく関わっていることは
あまり注目されておらず、
当時、産後ケアの重要性はまだあまり
社会で取り上げられてはいない時代でした。

妊娠中から産後1年までの女性の死因の1位は
『自殺』です。

つまり、産後うつは最悪の場合には
ママと赤ちゃんのいのちを奪う恐ろしい病気だということを
認識しなければならないのに、
もっとも重要なところが社会からスポッと
抜け落ちていました。

5児のママだったわたしは、
自分自身の5回の産後経験から
出産後から産後数年までのママの心のケアが
どんなに大切かということを身をもって感じたのです。

お産は、助産師なら誰でも介助できます。

でも、産後のママの心は?

助産師だからできる、というほど
簡単単純なものではないことも、
身にしみて感じていました。

教科書のきれいにまとまった一般論から飛び出した
個性豊かなリアルな子育ての現場や
苦悩と葛藤の渦のなかで奮闘するママたちの真実

そんな厳しい環境の中で
いかに肩の力を抜いて生きていけば、
笑顔が増えるのか

11人産んだ今となっては、
さまざまに異なる状況のなかで子育てしている
ママたちの気持ちを、5人産んで育てた程度の
助産師が解ったつもりになっていたことが
恥ずかしいですが、

伝えられるのは、わたししかいない!
これからは産後サポートがカギになる!

ならば、微力であっても
ばぶばぶが、その役目を引き受けよう!

と、思ったのです。

現代の日本女性は、
自己肯定感が低いという特徴があります。
自分に自信のないママは本当に多いです。

この特徴が災いして、
子育てに困難感を抱えるママたちの現実を、
毎日見ています。

継続的なケアは本当に重要で、
だからこそばぶばぶでは、
妊娠中期から、定期的に妊婦さんに関わっていきます。

授乳がスムーズなスタートになるように
おっぱいの状態を良好に導き、産前からスタンバイしておくことは
実は、産後うつのリスクを下げる
大きな材料にもなります。

産後のホルモン変化の話も、
パパへの気持ちがどう変化するかも、
包み隠さず、だけど決してネガティブではなく
ポジティブな視点から時間をかけて伝えていきます。

母乳信仰に苦しめられるママもまた、
産後うつの予備軍となるので、

妊娠中から、母乳育児の準備と、
それに対する正しい価値観
つまり、母乳のメリットだけではなく、
完全母乳で育てることが
ママのステータスではないということや
デメリットについてもしつこく伝えていきます。

出産までに、
かなり深いところまで信頼関係を築いていきます。
そして産後も切れ目のない支援をしていきます。

わたし自身は、
さらに6人目、7人目・・・11人産んで、
ばぶばぶは15年目に突入しました。

自らの産後の経験値が上がったことと、
助産師として何万人ものママたちに関わっていくなか、

産後の体の回復や子育てを助けるだけではなく、
彼女たちの生き方そのものを支えることで
子育てのサポートにつなげていくことこそが、
真の産後ケアなのだと確信しています。

今日も、ばぶばぶでは
人生相談がいくつも繰り広げられていました。

ばぶばぶは、みんなのストレス発散、
リフレッシュの場です。

変わった助産院だと言われても、
わたしは、このスタイルを
変えるつもりはありません。

【新登場】よりお得に、大容量になった「新マシュマロ」を大発表するで〜!
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