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2018.11.08

(4)『産後うつ』と『産後クライシス』全5回シリーズ

『産後うつ』や『マタニティーブルーズ』と
似ているけれど、違うものに、
『産後クライシス』があります。

『産後うつ』は、妊娠出産、子育てへの不安や
ストレスが原因で発症するうつ病です。

不眠、食欲不振、無気力、イライラ、強い罪悪感などの
症状が出て、赤ちゃんへの虐待やママの自殺を
防ぐことが重要になるため
専門家の支援や適切な治療が必要になります。

妊娠前まではそれなりに仲良し夫婦だったのに、
子どもを産んでからなぜか
パパの行動のひとつひとつが鼻について
イライラが止まらない・・・

出産や子育てを通して
心身の変化や子育ての疲労で
夫婦関係が悪化してしまう状況を
『産後クライシス』と呼びます。

ある研究によると、
「夫(妻)を愛している」
と胸を張って答えられる夫婦は
出産後から数年、明らかに減ることがわかりました。

とくに、
妻から夫への愛情が冷めるケースが多く
それに気づかない残念な夫・・・
というパターンがクローズアップされて
議論されることが多いようです。

「産後のママの苦労を理解しないパパが悪い!」

パパが悪者、
みたいなイメージがありますが、

夫婦はお互い様だと思います。
どっちが悪い、どっちが正しい
なんてことを論じても無意味ですね。

パパにはパパの言い分が、
ママにはママの言い分があるでしょう。

産後クライシスは、
「夫が無神経だからいけない」というような
単純な話ではなくて、
もっと複雑にさまざまな要因が
絡み合っています。

赤ちゃんが生まれると
ママは本能的に、
小さなわが子を命がけで守ろうとします。

その結果、産後数ヶ月にわたって、
パパに対して心を寄せたり、思いやる気持ちが
減ってしまうのです。

母乳の分泌を促すプロラクチン、オキシトシン
というホルモンは、

「すべて助けてあげなければ生きていけない
弱く、はかない存在と自分との聖域に
土足で踏み込んでくる者は
攻撃的感情をもって排除する」

つまり、

いくらそれが赤ちゃんのパパであろうとも、
大切な人生のパートナーであろうとも、
ママと赤ちゃん、2人の神聖なる世界に
招き入れるわけにはいかないのです。

「この子を育てることに全力を尽くすことが
最重要項目の今、異性を受け入れて
妊娠させられたら困る」

そんな遺伝子レベルの本能も
働くのかもしれません。
産後の女性に性欲がなくなる(ことが多い)のは
そんな理由もあるようです。

ママになると女性は強くなるといいますが、
2つの授乳ホルモンの作用で
大胆不敵になることが
動物実験でも明らかにされています。

以前、ばぶばぶで
40代後半~50代前半のママに集まっていただき
座談会をしたことがありました。

子どもはみんな、もう高校生ぐらいで
結婚継続年数は18年前後のママたちです。

「パパのことを愛しているか?」

という質問に、彼女たちは
なんて答えたと思いますか?

10人中6人が、

「好きでもないし嫌いでもない」

サラっと笑顔で
そう答えました。

「無だから、腹さえも立たない。
彼が何をしていようと、感情がない」

そんな彼女たちも30代のころは
パパの言動に一喜一憂していたのです。

心理学的には、
産後クライシスは必ずしも夫婦関係が
壊れかけていることを意味しません。

むしろ、パパに対して
産後クライシスのような苛立ちを感じるのは、
相手への気持ちが
前向きに維持されようとしている証拠です。

出産、そして子育ての開始は
家族という共同体の調和がとりづらくなる
大事件です。

でも、産後クライシスと同じような
夫婦の危機は、
長い結婚生活の中ではたびたび起こるのです。

思春期の反抗、家族の病気や怪我、
パパの転職、ママの仕事復帰、
実家との確執などなど・・・

大きな環境の変化というタイミングには
産後同様にピンチをもたらします。

パパに対してなんの感情も
湧かなくなった高齢ママたちは
夫婦関係が破綻しかかっているのか?

というと、そうではなくて

産後クライシスを幕開けに、
次々に起こってくるさまざまな危機を
ひとつずつ乗り越えてきた結果、
夫婦として、安定した状態で
信頼関係を築けているのだと思います。

逆に、産後クライシスを実感しているのに
そこに向き合おうとせず
きちんと乗り越えてこなかった夫婦は、
結局、あとで問題が表面化し、
結婚生活は破綻することでしょう。
(わたしのことやん)

だから本当は、
産後クライシスは悪いことではなく、
『あうんの呼吸の最強コンビになるための実地訓練』
なんですよね。

子育ては夫婦の絆を深められるとても素晴らしい
営みのはずです。

家事も育児もできる限り協力し、
ママの気持ちに寄り添い、話に耳を傾け
イクメンを目指しているのに
やってもやっても認めてもらえない・・・

ママのことを大切に思っているパパにかぎって
産後クライシスをこじらせていたりします。

彼らに共通しているのは、
「ママとしての妻を、パパとしてサポートする」
という意識になってしまっていること。

パパとしての役割に
意識を向けすぎ。
肩に力が入りすぎなんですね(笑)

つまり

「ママと赤ちゃんのためにぃぃぃ!
パパとして僕にできることぉぉぉ!!!」

って・・・
真面目すぎるゆえのこじらせ男子です。

悪気はなかったにしても、
女性心としては、出産してママになった自分を
「女」として見てくれていないパパに対し、
知らず知らずのうちにイライラしたり
冷たくあしらってしまうのは
しかたがないことかもしれません。

そのくせ、前述の授乳ホルモンの影響で
子育てで必死のママのそばに
パパが近寄ってきたら
それはそれで「斬!」の気持ちが
作動してしまいます。

ああ、女って
めんどくさいですね(笑)

大切なのは、
お互いに男女として、またひとりの人間として
愛し尊敬しつつづける意識を
持たなければいけないって思います。

産後のホルモンの変化などの影響で
ママが生理的に感情が不安定になるのは
しかたがないことではあるけれど、

だからといって、パパだけの問題じゃなく
産後クライシスは、ママ側にも
問題があります。

せっかく家事や育児に参加しようとするパパの
やる気を削ぐのは、
ママの配慮のない一言だったりすることも。

先日、ばぶばぶでパパが
嘆いていました。

「何か手伝おうか?」
ママに声をかけたら
「いちいち言わな、できんのか!」
とキレられたそうです。

相手に対する思いやりを自分の中で再確認したうえで
家事と子どもの世話の分担や、
相手への要望などをお互いの状況をふまえながら
きちんと話し合う時間を作ること。

仕事で忙しいから、とか
子育てで忙しいから、とか

「忙しい」は理由になりませんよ。

毎日ほんの10分でいいから、
夫婦がよりよい関係を築いていけるために

キレず、感情的にならず、
お茶でも入れて、
2人の会話の時間を意識して持ってほしいと思います。

産後クライシスに早めの対処で挑むことは、
取り返しのつかない産後うつを
防ぐことにもなるのです。

子どもが成長し、
いつか夫婦2人に戻ったとき
まったりとした円熟の境地になれますように。

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