コロナ感染防止対策と出産現場のリアルな声(2)
10月。
12人目出産で、
周産期センターに3週間入院しました。
YouTube効果で
廊下やトイレで
入院中の多くの妊婦さんやママさんに
「HISAKOさんですよね?」
「わぁ本物だー!」
って声をかけられました。(^◇^;)
それぞれほんの短時間、
お話するだけだったけど
「いつから入院してるの?
コロナだけどメンタル大丈夫?
辛いね。よくがんばってるね。
応援してるからね」
手をギュッと握ってあげるだけで
張り詰めていた緊張が一気にほどけて
とめどなく弱音が溢れ出してきたり、
中には言葉にならなくて
ただポロポロと泣いちゃう患者さんが
1人や2人ではありませんでした。
あっちにも、こっちにも
ただごとではないメンタルの患者さんだらけ!
・・・なんだ?
この状況は!
これが、
コロナ禍の妊娠出産の
〝病棟リアル〟なんだと肌で感じました。
病棟では、
朝昼晩と助産師や看護師が
定期的にベッドに回ってきて、
検温や胎児心音聴取などルチーンワークをこなします。
医師も回診に回ってきます。
大部屋入院だったので
スタッフの患者さんへの関わりの様子を
わたしは密かに観察していました。
(趣味悪いですね・・・(^◇^;))
「おなかの張りはどうですか?」
「出血はないですか?」
「赤ちゃんよく動いていますか?」
「順調に回復していてよかったですね」
「おなかの傷はキレイですよ」
「痛みはどうですか?」
体のことには言及するけど、
心の調子について触れてくれるスタッフは
1人もいないんですよね。
産後うつについては、ここ数年で
研究も進んだし、医療スタッフの間でも
重要視する方向になってきてはいるけど
実際、周産期センターで
妊婦やママのメンタルケアに重点をおき
関わっている空気は
ほぼ感じられませんでした。
昨日のブログの
冒頭にも書いたように
「コロナ禍の中でみんながんばっているから」
「辛いのはわたしだけじゃないから」
心の健康に関しては、
「自分が我慢すればいいことだから」
無理やり理性を働かせ
極限まで我慢しちゃったりするんです。
ほんとはもう限界でも、
自分の本当の気持ちに無意識に蓋をして
その危機的状況に気づけていない
患者さんもいます。
ある切迫早産の妊婦さんが
おなかの張り止めの点滴が外れて
内服だけで様子をみることになりました。
「よかったですね」
彼女のところに来る
助産師たちがみんなそう言いました。
そして妊婦さんは毎回、
「はい、ありがとうございます」
笑顔で答えていました。
だけど、彼女の表情がちょっと気になって
老婆心ながら声をかけてみたら
案の定、彼女はわたしの前で泣き崩れたんです。
「旦那に、もうずっと会っていない。
点滴は外れたのはよかったけど、
家に帰れるわけでもないし、
いつなんどきまたおなかが張るかもわからなくて
今もやっぱり不安は変わらない。
電話で旦那に気持ちを話してみたけど
電話だけじゃ、あまり伝わらないみたいで
温度差を感じてかえって悲しくなってしまった。
予定日まではまだずいぶんあるし、
外の世界からどんどん置いていかれてるような気がして
旦那との温度差もどんどん広がっていく気がして
なんだかとても気持ちがザワザワするんです・・・」
これが彼女の本音です。
点滴が外れたのは「よかった」かもしれないけど
彼女の心は全然「よかった」に
追いついてはいませんでした。
そんな簡単な言葉で片付けられるほど、
妊婦の心は単純じゃないってことですよね。
部屋に回ってくる助産師や看護師は
「困ったことはないですか?」
と聞いてはくれるけど、
それって
ヘアサロンでお約束のように
「痒いところないですか?」
聞かれて
「だいじょうぶです」
と答えるお客さんと同じです。
わたしに本音をぶつけてくる
患者さんに触れるたびに
出産現場で大切にすべき何かが
コロナ感染予防対策に紛れてしまい
見えなくなってしまっている危険性を
実感したのでした。
医療現場の崩壊を防ぐために
コロナ感染防止対策を徹底することと
本来の病院理念
『患者中心主義』
『それぞれの患者さんに最適な医療を提供』
患者さんが安心・満足な医療のために必要なこと。
両者を天秤にかけ
『大切なこと』のバランスを考えて
柔軟かつ固定概念にとらわれない対応を
切実に望みます。
わたしが入院していた病院だけではなく
全国の産院が同じような状況に
陥っているのではないだろうかと思います。
赤ちゃんが生まれるとき。
それは、
夫婦の関係性を新たに構築するための
大きな大きなターニングポイントであり
とてもとても大切にしなければならないときだと思います。
なのに、その『大切』が、
コロナ禍によって軽んじられてしまう現実・・・
わたしが見た2020年の出産現場には
人権を奪われ、自尊心を失い、
不安定になって泣いている多くの女性たち、
戸惑う男性たちの姿がありました・・・。
まだ続く