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2019.02.20

母乳性黄疸、おっぱいやめないで

生まれて2日〜3日目
赤ちゃんの肌がだんだん黄色くなってきます。

この現象は、新生児黄疸と呼ばれ、
ほとんどの子が経験する生理的なものです。

黄疸って言われると「肝臓悪いの?!」
不安になるかもしれませんが、
放っておいてもだいたい1週間ぐらいで
自然に消えていきます。

成長過程で普通に見られ、
害があるわけではありません。

新生児の黄疸は
なぜ起きるかご存じでしょうか。

ママのおなかの中にいるとき
胎児は自力で呼吸をすることはありません。
胎盤とへその緒を通して
ママから最低限の酸素をもらって成長していきます。

へその緒から分けてもらった酸素は
胎児の肺を介さずに血管内に直接入ってきます。

血液中で酸素を全身に運ぶ役割をするのは赤血球です。
なので、胎児期には
たくさんの赤血球が必要なのです。

出生後、肺呼吸の開始とともに
赤血球に頼らなくても自力で多くの酸素を
取り込めるようになります。

胎内で使っていたほどの
大量の赤血球は必要がなくなるので
余分な赤血球が急速に壊れ始めます。

壊れた赤血球の残骸、
それが黄疸を引き起こす『ビリルビン』という物質。

本来は、ビリルビンは肝臓で分解されて
うんちと一緒に出ていきます。
うんちが黄色いのはビリルビンの色です。

でも、生まれたばかりの赤ちゃんの肝臓は
未熟で効率よく機能することができません。
きちんと動き出すには数日かかるんですね。

それで、
体内で作られた黄色い色素のビリルビンが
うまく排泄できず、蓄積しまうのです。

生理的なほどほどの黄疸の範囲で済むことが多いものの
しばしば、ビリルビン値が上がり、
黄疸が強く出てしまうことがあります。

例えば、お産が吸引分娩になると
赤ちゃんの頭に過剰な圧力がかかります。
その圧力で頭蓋骨を覆っている骨膜の一部が剥がれたり
血管が破れてしまったりすることがあり、
その部分に血液が溜まって膨れてしまいます。(頭血腫)

頭血腫ができると
そこが治っていく過程でビリルビンがたくさん蓄積し、
黄疸が強く出てしまいます。

ビリルビンは脂肪にくっつく作用があり、
生まれたての赤ちゃんの身体の中で
もっとも脂肪が多い場所が脳なんです。

黄疸が強く出すぎると、ビリルビンが脳にくっついて
赤ちゃんの発達に影響することがあるため、
ある一定限度のビリルビン値を超えた時点で
治療をします(光線療法)。

もうひとつ、
赤ちゃんの黄疸の原因として多いのは

生後1週間以降、
生理的黄疸の時期が過ぎても
黄疸が長引く場合にまず疑われる、
『母乳性黄疸』とか『遅延性黄疸』と呼ばれるものです。

先日、生後18日目の赤ちゃんが
遅延性黄疸で小児科医から

「とりあえずおっぱいをやめて
しばらくミルクで育てて」

と言われました。

長引く黄疸があれば、
とりあえずおっぱいやめてみる

っていう対処方法は
ちょっと違うよなぁと思います。

黄疸のリスクは
病的な理由で症状が現れている場合に限り
問題となるのであって、

生理的な理由での黄疸は
遅延していたとしても大丈夫なんです。

母乳が原因ではない
他の理由で病的な黄疸が出ているとすれば、

便の色が白っぽかったり、おしっこがオレンジ色だったり、
血液検査では肝機能の低下などのサインが見られ、
母乳、ミルクの飲みが悪く、あまり体重が増えないというような
「肌の色」以外の症状が重複して見られるはずです。

母乳性黄疸は、母乳そのものが
黄疸の理由になっているのではなくて、

新生児の間は、
授乳の回数が少なかったり、
そもそも母乳の出方もまだ軌道に乗っていないために
十分な量が飲めない「一時的な母乳不足」が原因です。

黄疸が出ると赤ちゃんは眠りがちになります。
よって、あまりおっぱいを欲しがらなくなります。
無理に起こして飲ませようとしても
白目をむいて口も開いてくれず
ママは途方に暮れてしまうかもしれません。

体力がなくて
直接おっぱいを飲めない赤ちゃんの場合には、
ママは隙をみて、できる限り搾乳をしてください。
(ろくに飲んでくれない)直母のあとに哺乳瓶で搾乳を足しましょう!

母乳性黄疸の一番の治療は、
兎にも角にも、とにかくおっぱいを吸わせることです!!
黄疸以外に気になるところがないなら
ほうっておいて大丈夫。

おっぱいをたくさん飲ませて
ビリルビン排泄を促したほうが
黄疸は重症化しにくく、自然に消えるんです。
なので、頻回授乳をしてほしい!

ですが、一部の産院、小児科の先生は
母乳性黄疸を自然なことだとは見なしません。

ブドウ糖を飲ませたり、ミルクを足したりして
母乳以外をとにかく飲ませようとします。
哺乳量を増やせば、排泄量が増えるので
黄疸は早く消えるからです。

ミルクをガンガン飲ませると
当然、授乳回数が減ってしまいますよね。
直母回数が少なければ少なくなるほど
母乳の生産量が減ってしまうリスクは避けられません・・・。

「母乳性黄疸が疑われるから母乳をやめてみる」
という不自然な介入をして対処するのは
対処法としてはなんだか乱雑すぎるというか、

ひとまず母乳をやめて黄疸がおさまるか観察するという
実験的な行き当たりばったりな方法は
積極的な根拠に基づく治療法とは思えません。

生後18日目の黄疸の赤ちゃんの
ママのおっぱいを見せてもらったところ分泌は良好で、
こんな状態でいきなり断乳したら
どんな結果が待っているか・・・

乳腺炎に向けてまっしぐら、ですよね。
考えただけで恐ろしい。

赤ちゃんも診せてもらいましたが、
確かにまだちょっと黄疸は出ているものの
しっかり体重も増えて、母乳もたくさん飲めていました。
うんちの色もキレイだし、おしっこの色も問題なし。
活気もあるし、元気に泣いて
手足も元気に動かしていました。

母乳っ子は、
生後1ヶ月以降、生後2ヶ月ごろまで黄疸が続くことがあります。
これは、母乳中に含まれる女性ホルモンが原因です。

上記のような黄疸以外の症状が認められない限り、
ほっといても自然に消えます。

母乳性黄疸なのか、
そうではないのか医学的にちゃんと診断されないまま
「たぶん母乳性黄疸だね」と放置され、
「とりあえず母乳をやめてみよう」の対処をするのは、
赤ちゃんの健康という視点からも、ママのおっぱい的にも
双方にとって危険です。

黄疸は残っているけど、他の症状はとくになく元気!
ということであれば、母乳を続けながら様子をみて
いいのではないかと思いますよ。

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