HISAKOブログHISAKOブログ
2020.05.18

46歳・12人目妊娠中『出生前診断』をどうとらえるか?

「HISAKOさん、超高齢妊娠ですが、
いろんなリスク、不安じゃないですか?」

「HISAKOさんは
出生前検査をどのように考えておられますか?」

「HISAKOさんなら
どんな子が生まれてきても
育てる覚悟があるんですよね・・・」

46歳にして妊娠中のわたしの元には
出生前診断にまつわる質問や
メッセージがたくさん届いています。

晩婚化が進み、
妊娠出産の高齢化が進んでいる中で
〝健康な赤ちゃんかどうか〟を
心配する妊婦さんはここ10年で本当に多くなりました。

わたしが助産師になった1997年頃には
初産年齢は20代の方が今よりずっと多く、
40代の妊娠は珍しかったように記憶しています。

令和時代、
高齢妊娠はとくに珍しいことではなくなりました。

ですが、やっぱり
40歳以上の妊娠では喜びもつかの間、

妊娠高血圧、早産、妊娠糖尿病といった
妊婦自身の合併症の心配、
そして胎児の先天性染色体異常の心配など

さまざまな不安が
さざ波のように押し寄せてきますよね。

妊婦に起こり得る合併症に関しては
ある程度回避する術もありますが、

赤ちゃん側の問題に関しては
妊婦が何か努力したところで、避けられることでは
ありません。

2013年、
妊婦の採血のみで数種の染色体異常の有無が
診断できる新型出生前診断が登場しました。

赤ちゃんの染色体を調べる既存の出生前診断、
羊水検査は、妊娠中期限定の検査であることや、
流産を引き起こす可能性があるため
安易に受けることはためらわれましたが、

新型出生前診断は妊娠初期から検査可能で
妊婦が採血をするだけなので
流産リスクがなく、とても手軽です。

そんな背景から
「出生前診断を受けるか受けないか?
という相談は、
年々増えているように感じます。

なぜ検査を受けようと思うのか。

動機としてもっとも多いのは、
「高齢妊娠だから」です。

現在では35歳以上が高齢妊娠に分類されていて、
生まれてくる子の染色体疾患の頻度は
妊婦の年齢とともにゆるやかに上昇していきます。

ですが、高齢を理由に
検査を受けるか悩んでいる妊婦さんたちの多くは
必ずしも、染色体異常の発生頻度などを具体的に意識して
さまざまな角度から高齢妊娠の持つリスクを
理解した上で、不安を抱いているわけではないようです。

高齢妊娠のリスクについては、
テレビなどでもよく
その是非が話題にあがるし、

ネットでも
たくさんの情報を得ることができます。

ですが、

『35歳以上の高齢妊娠では
染色体検査を受けることが勧めらている』

という、とても端的な情報だけを
マタニティー雑誌の特集記事や
ネットのブログ、メディア報道で中途半端に得ることで
自分は出生前診断を受けなければならない立場なんだろうかと
悩んでしまうようです。

実は、染色体の病気というのは、
それほど珍しいものではありません。

流産を経験した人は多いと思います。
わたしも今回12回目の出産ですが、
4回流産しているので、妊娠そのものは16回目です。

本来は、全受精卵の15%という
かなりの頻度で染色体異常は存在していて、
生存に関わる合併症を併発する種類の染色体に
問題があった場合には
その多くは妊娠の進行とともに流死産してしまいます。

染色体異常のなかでも頻度が高いのが
21トリソミー(ダウン症候群)です。

ダウン症も致命的な合併症があれば
胎内で育つことができずに流産してしまうことが多く、

妊娠末期まで順調に発育し
無事に生まれてくることのできる赤ちゃんたちは
選ばれた強い生命力を持った子たちです。

35歳の妊娠では、ダウン症の赤ちゃんは
300人に1人ぐらいの割合で生まれてくると言われています。

『1/300』という数字に
あなたはどんな印象を受けるでしょうか。

300回妊娠して、1人だけ生まれる
と考えると

まず大丈夫なんじゃ?

という気もするし、

20歳代の1/1000と比べたら、
1/30っていうのは明らかに高頻度で
思わず足がすくむかもしれません。

この統計上の数字をどうとらえるか、には
個人差があると思います。

46歳だと、なんと1/30です!
これだけ見ると言葉を失いますね・・・。

ですが、30回妊娠して29回は健常児。
そう言われると、ちょっととらえ方が
変わる気がしますが、どうでしょうか。

また、
1/30をパーセントに直すと3%です。

46歳でのダウン症出生率は3%
つまり、97%は大丈夫、ということになります。

これらの数字に
あなたはどんな印象を受けるでしょうか。

母体妊娠年齢のリスクを考えて
出生前診断を受けるか受けないか。

周産期医療従事者から
出生前診断の説明を受けるときに、

「あなたの年齢では1/30の確率でダウン症の赤ちゃんです」
と説明されるのと、

「97%は大丈夫なんですよ。
だけどリスクはあるのでよく考えましょうね」

と説明されるのとでは

受ける印象がずいぶん変わるのでは
ないでしょうか。

妊婦さん自身が〝確率〟のもつ意味を
正しく理解するためには
いろいろな理解しやすい表現に直して
考えてみたり、説明を受ける必要があると思います。

それから、ママの年齢を考えるときに
もうひとつ注意しなければならないことがあります。

赤ちゃんの先天的な病気というのは、
染色体の疾患だけではないということです。

例えば
心臓になんらかの問題を抱えて生まれてくる子は
100人に1人です。

出生前診断でわかるのは、一部の染色体異常。
超音波診断でわかるのは、一部の形状異常。

そのほか、骨格や関節の問題だったり、
代謝や免疫などの機能障害、
内臓の疾患など、

出生前診断でも、精密な超音波診断でも
胎児期には見つけることのできない問題は
数え切れないほどあります。

わが家のななちゃんには発達障害があります。
発達障害は先天的な機能障害でありながら
胎児期には発見されません。
彼女が診断を受けたのは小学生になってからです。

つまり、出生前診断で
ダウン症をはじめとする
数種類の染色体異常が
「陰性」という結果だったとしても
安心できるのは数字的には
その一部に過ぎないのです。

出生前診断は商業主義に結びつきやすいということも
忘れてはなりません。

妊婦が感じている不安や心配につけこんで
高額な出生前診断を勧めるクリニックも
実際増えているのを感じます。

マタニティー雑誌やネットなどから
「怖いんだよ」「検査しといた方がいいよ」と
なんとなく刷り込まれていたり、

家族や友人から指摘されたりして、
高齢やから受けなあかん!
影響されて、その気になってしまっているだけの
妊婦さんはけっこういらっしゃいます。

産院で、
「○歳以上だから出生前診断を受けるべき」
と言われたときにも、一旦落ち着いて考えましょうね。

出生前診断の広告の一種であることもあるので
注意が必要です。

わたし個人的には、
何歳以上なら出生前診断を考慮すべき、ということに
正しい答えはないと思っています。

どんなに年齢が高くても
必要ないと考えればまさにそのとおりだろうし
若い妊婦でも、必要だと考える人も当然いるでしょう。

「どんな命も同等に尊い」と言いますが
多くの障がい児と家族はストレスと孤独との戦いのなか
必死に生きておられるという現実も
わたしは日常的に見ています。

また、出生前診断は
命の選択につながるという批判もありますね。

ですが、赤ちゃんに問題があった場合、
療育していくことへの覚悟、
ママ自身の限りある人生を大きく変える決断、

産む産まないどちらの選択も、
優しさと責任あるアクセルのひとつじゃないかと思っています。

実は、わたしは今回の妊娠では、
出生前診断を受けるかどうか考えました。

高齢うんぬんの問題ではなく、
結果次第で
心の準備をしてこの子と生きていくために
親として何を覚悟しないといけないかを
知るツールとして出生前診断を利用し、
出産の日を迎えるためでもあり、

場合によっては
人工妊娠中絶を選ぶためです。

よくない結果が出たときに
自分はどのように感じ、判断し、行動するのか。

〝そうなってみないと、正直わからない〟

それが考えた結論でした。

そしてどんな感情にも、
どんな判断にも「正解」はありません。

しいていうなら、
夫婦で話し合って2人で決めた〝進む道〟こそが
正解なのかな。

幸せの基準は人それぞれで、
健常児だから幸せとも限らないし、
障がい児だから不幸だとも限りません。

どんな命も限りない可能性に満ちています。
そして障がいのある子を家族として受け入れるということは
キレイごとだけで語れることではないと
ばぶばぶでさまざまな親子と関わり、
日々実感しています。

発達障がい児のななちゃんには
家族は毎日振り回されています。
その反面、彼女のおかげで人間の持ついろいろな可能性を
再確認させてもらっています。

深い学びを与えてくれる彼女から得た価値観を軸に
今回の妊娠、出生前診断は受けないことにしました。

不安がないか?
と言われると当然不安ですよ。

「HISAKOさんなら
どんな子が生まれてきても
育てる覚悟があるんですよね・・・」

いやぁ〜そんなのわかりません!
もしかしたらわたしは、
めっちゃ小さい器の人間かもしれません。

何が起こるかなんて、わからないし、
自分がどんな気持ちになるかなんて
想像もできません。

だから結局、

〝産んでみなければ何もわからない〟

出生前診断で染色体異常がないとわかって
ホッとして出産したあと、
別の問題が発覚したらどうするんだ?
そんな事態は、多々あるんだぞ、

ななちゃんを育てているからこそ、
わたしはそう思っちゃうわけですよ。

どんな家族にも選択の自由と権利があります。
検査を受ける、受けない、
個人の判断は尊重されるべきものです。

だけど、
高齢だからというだけの理由での出生前診断や、
この検査が万能だというイメージだけが先行し、
なんとなく受けるのは危険かなと思います。

障害がなくたって、子育ては苦悩の連続です。

平和に子育てを終える人もいるだろうけど、
わたしは思春期育児で
食事が喉を通らない、眠れなくなる、
「産むんじゃなかった・・・」って
自分を責め続ける数年を過ごしました。

障害があろうとなかろうと
子どもの親になるということは
嬉しいことも辛いこともいっぱいあるのです。

要は、
どれだけ親になる覚悟を持てるかだと思います。

だからね〜

出生前診断の議論をされても、
HISAKOさんはどう思うか、と質問されても、

なんかもう、何か正しいのかなんて、
わたしにはわからーん!

と、いうのが正直な気持ちです。(^_^;)

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