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2016.09.09

こだわりのお産

戦後まもなくまで、日本のお産は
ほとんどが自宅で行われていました。

厚生労働省の人口動態調査によれば、
1950年には施設(病院、診療所、助産所)での出産は
全体のわずか4.6%。
残りの95.4%は自宅で行われていて、
それらのお産のほとんどは“産婆さん”
今でいう助産師が取り上げていました。

2006年には、病院と個人クリニック、診療所での出産が
合わせて98.8%、助産院出産が1.0%、
自宅などの施設外が0.2%となっています。

今は、ほとんどのお産が
産科医のもとで安全に行われていますが、
開業助産院や、大きな病院の中に開設されている
院内助産院など、こだわりの施設で
出産したい!という少数派の妊婦さんも
いらっしゃいます。

「産み方は生き方」

たしかにそのとおりだと思います。
病院に丸投げで産ませてもらう、のではなく
妊婦さんが主体となって産む、のだと。

でも、いつの時代においても
お産には危険が伴います。

欧米には日本のように
病院の敷地から離れた場所にある
分娩取り扱い助産院は存在しません。
なぜなら、緊急帝王切開を行うことのできない産科施設は、
法律上認められていないからです。
出産施設はすべて病院の敷地内にあり、
緊急時にはすぐに医師と連携できるシステムに
なっています。

日本での助産院での出産、
開業助産師による自宅分娩では、

・リスクの低い妊婦のみ対象
・すぐに搬送可能な提携病院との「強い」つながり
・分娩介助はいかなる場合にも助産師2名以上で
・新生児蘇生の徹底した蘇生の準備が整っている

これらの条件が完ぺきに満たされている
必要があります。

だけど、実際には
新生児蘇生のための台も
設置されていない助産院もあるので、
助産院で産みたいなぁと考えているみなさまは
ただ家から近いから、とか
自然だから、という理由だけではなく
その助産院がお産の安全性を第一に考えているかどうか
医師との協力体制が万全かどうか
よく見極めてから決定するようにしてくださいね。

実際、自宅出産の新生児死亡率は
病院出産の3倍だという統計もあり、
妊娠出産に関するケアを
スピリチュアル的精神論で美しくまとめてしまったり、
医療行為に否定的で医療以外の何か・・・
たとえば、マクロビや気功、ヨガ、整体、ホメオパシーなど
代替しようとする助産師もいます。

わたしは、これら代替医療を否定はしません。
ときに、正しく適切な医療行為の上に
代替医療をプラスすることは、
妊婦さんの健康維持、促進に効果があると
考えています。

ただ、助産師の仕事はあくまで
「お産を助ける」ことなんです。
代替医療がメインになっては危険だと思うし、
「病院ではできない何か」だけを
やたら強調して妊婦さんに伝えることは
医療従事者として無責任な行為でしかないと
思っています。

わたし自身も助産院で産んだことがありますが、
順調な妊娠経過、順調な分娩経過なら
「自然分娩をしたい!!」という
強い意識をお持ちの妊婦さんが、
その希望を実現できるのは
一生の思い出になる
とてもすばらしいことだと思います。

日々、そのような選択をされた妊婦さんたちが
希望を叶えることができたらいいなぁと
願いながら仕事をしています。

ただ確率的に、
全妊婦さんの10~20%は正常分娩ができない
可能性があることは否めません。
そしてそれは
産み場所を問わずに
誰にでも起こり得ることなんですよね。

産科医療において、
一番の優先事項は母子の生命の確保です。
いわゆる母体搬送や新生児搬送の当事者になったとしても、
それで母子の生命が救われたなら、
思いっきり喜んでいいんですよ。

ばぶばぶには、さまざまな親子さんが来院されます。
妊娠中、または分娩時に
想定外なことが起きて搬送先でマタニティ―ブルーになったり、
搬送先のドクターや助産師に心を閉ざしたり、
攻撃的になられる方もいらっしゃいます。
受け入れ側のドクターや助産師が
そのような妊産婦さんへの対応に
困り果ててしまった・・・という
医療者側の苦悩を耳にすることもあります。

何らかの事情で、
思い描いていたような自然分娩ができず、
母乳で育てる意欲満々だったのに
ミルク育児からのスタートになってしまったとしても、
それは誰のせいでもありません。
誰を責めることでもないのですね。

そうはいっても、妊婦さんは
心の切り替えも現実の受け入れも
すぐにできるはずがありません。
だって、感情ある人間だもの。

見知らぬ大きな施設にいきなり搬送され、
初めての助産師や医師と、新たなコミュニケーションを
とらねばならない妊婦さんの気持ち・・・
不安でたまらないはずです。

こだわりのお産がしたくて
通院していた妊婦さんなら、
きっと、「ここで産もう」としていた施設の
助産師とはそれなりの信頼関係が築かれていると思うので

搬送となったとき、
元いた施設の助産師は
不安でいっぱいの妊婦さんに
どうかどうか、肯定的な言葉を
たくさんかけてあげて欲しいと思います。

そうじゃないと、
赤ちゃんの救命のために行った緊急帝王切開を
何年経っても受け入れられなかったりして、
彼女のその後の子育てが
とても悲しいネガティブなものになってしまう
かもしれません。

ばぶばぶでよく聞くのが、
生まれてすぐ、医学的適応でミルクの補足をした場合、
「母乳だけで育てたかったのに!!」
「勝手にミルクを与えられてしまった!」と
ミルクを補足した助産師に
ママが刃を向け、暴言を吐いたという話・・・

正常新生児と早産児や低出生体重児は
同列に論じられないことが多々あるのですが、
医療者側から、そういう基本的なことを
きちんと説明されていないママが
多いのが現状なんですよね。

納得できる十分な説明と
優しく暖かな声かけもなく、
彼女の希望に沿わない医療行為をされれば、
そりゃあ当然、ママは『医療行為全拒否!!』な気持ちに
なることでしょう。

こだわりのお産をしたかった、
母乳育児への強い信念があればあるだけ
医療を受け入れられないことがあるでしょう。

医療介入は妊産婦さんと赤ちゃんのために
なされたことなのに・・・です。

産科医療におけるスムーズな病診連携は、
困難な状況に際しても、
妊産婦さんの気持ちが前向きになられるように
寄り添い支えることから
始まるのではないかと思います。

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