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2014.06.05

母なる海

神戸の総合病院に勤めていた頃
夜勤明けにはわたしは必ず海へ出かけていました。

ただ眺めているだけで無心になることができる海。
大好きな場所でした。

目を閉じて
耳で波の音を聞き
鼻で潮の香りを嗅ぎ
肌で柔らかい海風を感じ

そこからパワフルな勇気をいただいたり
ときにはホロリと涙を誘ったり
ポワンと温かい気持ちになったり
同じ景色なのにいつも見える表情が違う。

淋しい…
切ない…

豊かな心を輝かせ今ここに
生きているから?

嬉しい…
幸せ…

いのちを感じ守るべき人がいて
支えてくれる人がいるから?

毎回感じ方が違うのはきっと

そのときの、ここで感じるわたしの心を
そのまま映しているからだと思います。

20億年以上も昔、太古の海で誕生した単細胞は
やがて魚やカエルなど両棲類になり
陸に上がって、は虫類…そして哺乳類へと進化しました。

わたしたち人間の祖先が姿を現したのは
200万年も前のことです。
果てしなくて気が遠くなります。
今でも胎児は羊水のなかで進化の過程を40週間かけて
再現し繰り返していると言われています。

羊水は太古の海のなごり。

海の成分と限りなく近い羊水は、いのちを産み育んだ
太古の海そのものです。

「海」という漢字には「母」という字が入っています。
フランス語では

「母」は「La Mere」
「海」は「La Mer」

「母」には「海」を意味する綴りが含まれています。

海のなかに母がいて
母のなかに海があるのですね。

子育て中はなにかとイライラすることが多いけれど
大きな海をぼんやり眺めるだけで
自然と心が落ち着いてきます。

視野に入りきらないほどの大きな景色
そこに降り注ぐ光
キラキラと輝く水平線。
わたしたちの視野を広く心を大きく
開放させてくれます。

なんにも考えずただ眺めているだけで
自分の苦悩なんかちっぽけなことだと思えてきます。
海の大きさに比べれば本当にささいなこと。

わたしたちは海から誕生しました。

母の羊水のなかで大切に育まれて
生まれてきました。

だから、とくに悲しい出来事があったとき
心が少し揺らいでいるとき

無性に海に行きたくなります。

心のやすらぎを求めるとき
新たな出発を望むとき

生みの親と触れているような安心感をいただける
海を志向するのは自然の摂理なのかもしれませんね。
何かを決心するときには切実にそう感じます。

波の音…

これもまたわたしたちに心地よさを与えてくれます。

大自然の環境音にはすべてある法則があるんだそうです。

雨音
小川のせせらぎ
虫の声
風の音

これらには「規則正しい」と「不規則」が
ちょうどいいぐらいに混合した「ゆらぎ」を持っています。
キャンドルの灯りもそうです。

わたしたちの身体も、
心拍、呼吸
同じように「ゆらぎ」があるんだとか。

現代社会で乱れがちな身体のリズムが
もともと人が持っている「ゆらぎ」のリズムの刺激を受けることで
本来の状態に近づき、やすらぎを与えてくれるのですね。

赤ちゃんは子宮内で聞いていた周波数の音を聴くと泣きやみます。
おっぱいをくわえてチュクチュクチュク…
規則的なようで不規則な赤ちゃん特有のお口の動きには
鎮静作用があると言われています。

彼らはおっぱいをくわえると一瞬にして眠ってしまいますよね。
それは本当に魔法のよう…!

呼吸や心拍のゆらぎのリズム
これらは大宇宙の母とその子宮のなかで
育まれているわたしたちとを結ぶへその緒のようなものです。

赤ちゃんがママにだっこされた途端に泣きやむのは
大自然がくれた「ゆらぎ」の法則。
ママの呼吸や胸の鼓動が本能に語りかけるからかもしれません。

宇宙が一定法則に従い運行しているように
わたしたちの身体や心も、すべては
一定の法則性に従って成り立っているのでしょう。
不思議ですね。

自分のことを振り返るとき海ほど絶好の場所はありません。

「どんなあなたも
まるごと受け止めてあげるよ」

「あなたは
そのままでいいんだよ」

そう言って海は穏やかに微笑みます。

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