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2020.05.27

無痛分娩(1)

ばぶばぶに来られるママたちの
母子手帳の出産のページに
『無痛分娩(硬膜外麻酔分娩)』という文字を
見ることが増えました。

硬膜外麻酔の適応は

(1)医学的適応ー妊娠高血圧・前回帝王切開後の試験的経膣分娩
 児頭骨盤不均衡、回旋異常など
(2)母体の合併症ー精神疾患・循環器疾患・呼吸器疾患など
(3)産婦の希望

わたしが第一子を産んだ22年前は
(1)(2)で実施される無痛分娩はありましたが、
(3)で実施される無痛分娩は
まだ一般的ではありませんでした。

いつの頃からか、
あちこちの分娩施設で、

「冷やし中華はじめました」

ちゃう、

「無痛分娩はじめました」

という
張り紙を目にするようになり、
無痛分娩を希望される妊婦さんが増えていきました。

できるだけ医療介入することなく
自然な経過を大事にしたい気持ちはありますが、

すべてのお産にそれが当てはまるわけではなく
様子を見ながら自然な流れを待った方がいい場合と
早めに医療介入したほうがよい場合があります。

例えば、
赤ちゃんはママの骨盤の中を回旋しながら進んできますが、
なんらかの理由で正しく回旋できないと
お産がスムーズに進まず一時停止してしまいます。

絶え間なく大きな陣痛は押し寄せるのに
肝心の子宮口はちっとも開かず、赤ちゃんも下がってこない。

見通しが立たない、ゴールが見えないお産は、
産婦さんはとっては拷問ですね。

疲労、絶望、不安、恐怖。

ネガティブな感情に支配されると
人間はだんだん呼吸が浅くなり、
全身の筋肉が硬直します。

産道は筋肉の固まりだから、
同時に硬く収縮してしまい、
ますますお産が長引く悪循環に陥ってしまいます。

長時間にわたって
子宮収縮という大きなストレスを受け続けると
赤ちゃんに供給される酸素も少なくなり
予備能力限界で心拍が下がってきてしまうことも。

このような経過のお産になってしまったとき、
思いきって無痛分娩に切り替えれば、
痛みが取り除かれることで産婦さんがリラックス、
すると連動するようにして産道周辺の筋肉が緩んで
赤ちゃんへの酸素供給量が増え
下がりがちだった心拍も回復、
一気にお産が進む場合があるんですよね。

無痛分娩は、産婦さんと赤ちゃんの体力の消耗を防いで、
帝王切開を避けることができるかもしれない
効果的な分娩の方法のひとつなのです。

お産の経過っていうのは、
どんなに熟練した産科医や助産師でも
「ここまでは自然で、ここからは医療介入!」
とはっきり断言できるものではありません。

経膣分娩でいけそうなのか?
それとも緊急帝王切開のほうがいいのか?

スタッフの判断もいろいろだったりするし、
産婦さんの想いや不安もそれぞれ
十人十色、違います。

安全であることは最優先、
さらに、心理面でも産婦さんにとって満足のいくお産に
持っていきたい!って思うからこそ、
産科スタッフも葛藤します。

分単位、秒単位で
「待つのか?」「医療介入するのか?」考えながら
ひとりひとり違う産婦さんのお産を診ていきます。

高血圧の妊婦さんはお産のときに
脳出血を起こすリスクがありますが
無痛分娩にすることで
お産の痛みが軽くなれば
分娩時の合併症を防いで安全に出産できます。

痛みをとることで、
陣痛中に消費される酸素量が少なくなり
心臓や肺の合併症を持つ妊婦さんも
負担が少なく出産できます。

無痛分娩はすごいんですよ〜!

でも、実は無痛分娩だったけど、
なんとなく後ろめたくて、
そのことをあまり人に話せない・・・というママも
けっこういて。

母乳育児がママの鏡で、
ミルク育児は負け組・・・のような先入観と
近い感じなのかなぁ。

勝ちとか負けとか。
素晴らしいお産とか、ダメなお産なんて
存在しないんだけどね。

何をもって「よいお産」なのか?

その基準は人それぞれで
答えがないと思います。

高齢出産が増えている今、
吸引分娩や帝王切開と同様に、
無痛分娩もとても素晴らしい医療技術の一つ。

だから、無痛分娩をしたママたちには
もっと胸を張ってほしいとつくづく思います。

つづく

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