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2020.06.09

骨盤ベルトとか骨盤矯正とか。

助産師向けの雑誌などで
『母子整体』という言葉を目にするようになったのは
ここ15年ぐらいでしょうか。

出産時には赤ちゃんの頭が
ママの骨盤内を下降してくるため恥骨が開きます。

開き方の程度によっては産後に
体を動かすことさえできないほどの激痛に悩まされ
産婦人科から整形外科へ直行になってしまうような
ケースも稀にあります。

子育てどころか、
自分の体さえも自由に動かせない状況は
ママとして、どんなに辛いでしょうか・・・。

わたしが助産師なりたての当時の臨床では、
産後に恥骨の痛みがひどい場合には
さらしなどで足の付け根(大転子)周囲を
しっかり固定する方法が一般的でした。

某骨盤ベルトの存在を知ったのは
1999年、第2子を出産したころのことです。

整形送りになるほどのひどい恥骨結合離開を起こすことは
滅多にありませんが
それでも恥骨の痛みに苦しむママのために
骨盤周囲の低い位置で自分で簡単に固定できて
動いてもズレにくい『某骨盤べルト』は画期的な発明で
助産師たちは飛びつきました。

その後、その骨盤ベルトの認知はどんどん広がり、
多くの妊婦さんやママたちが
使っておられるのを見ることが増えました。

こんなに話題の商品なんだったら、
とことん知識を入れておかねば!と
好奇心にかられて資料を取り寄せ夢中で学び、
自身の妊娠でも、実験的に使ってみたりしました。

その後たった数年のうちに
妊娠中や産後の腰痛、恥骨痛、脚の付け根の痛みなどに
効果のあるベルト、とされていた商品が

切迫早産の予防、むくみ改善、便秘改善、
ダイエット、生理不順などにも効果あり、
出産時の出血量を減少させ、安産を呼ぶ!

など

産前産後のさまざまな不調がすべて
骨盤の開き、歪み、ズレに関わっていて、
産後だけではなく妊娠中から骨盤ベルト着用を
推奨することが助産師業界でも定説になり、

大学病院の売店でも骨盤ベルトが販売されるようになり
街の整体、整骨院では
次々に「産後整体」「骨盤矯正」「マタニティー整体」という
文字が踊るようになりました。

だけど、

「骨盤矯正」という言葉は民間資格で
出てくる言葉で
国家資格ではそのような言葉は存在しないんですよね。

骨盤ベルトをすることで、
どのようなメカニズムで切迫早産を防ぐんだろう。

骨盤矯正をすることで、
なぜ痩せるのか?

さまざまの立場からの情報に、
なるほど・・・と思うことはたくさんありました。

とくに、教科書には載っていなかった視点からの
骨盤と切迫早産への関連、という新しい分野の考え方は
とくに斬新で新鮮で、
度肝を抜かれ、同時に感動したのを憶えています。

ただ、切迫早産の主要な原因は
絨毛膜羊膜炎であって、
骨盤由来ではない、という認識でいたので、
骨盤の歪みやズレが切迫早産を引き起こす、
という理論は、今までわたしが信じてきたものを
覆すような内容だったため、正直戸惑いもありました。

と同時に、
自分が助産師学校で学んできたことって
なんやったんやろ。。。とも思いました。

骨盤が締まっているかどうかが
胎児の子宮内環境の良し悪しに関わるとか、
骨盤が開いていることが逆子の原因になるなんて、
誰も教えてくれんかったもん。

母子整体の流行りの考え方の波に
乗っていかなあかん!という焦りもあり
「これが最先端なんや!」と
信じ切っていた部分もあったかも。

新しい知識を入れていくことに
ただただ必死でした。

・・・その反面で、常に違和感がありました。

整体の先生は、骨盤は「歪む」
っていうし、

整形外科の先生は、
骨盤は「歪むはずがない」
骨盤矯正なんて必要ないって言います。

いったいどっちが正解なんー!

よくわからないまま
10年近くが過ぎました。

骨盤矯正にしても、骨盤ベルトにしても
医学的根拠がないまま、
一人歩きを始めた・・という感じが拭えず戸惑ったまま、

妊婦教室なんかでは、
骨盤ベルトの重要性をもっともらしく
自信満々に語ってきました。

そもそも、「骨盤が締まる」というけど、
実際に骨盤が締まったことを立証するような
レントゲンやCTなどの客観的データは
見たことがありません。

いつしか、
恥骨痛や腰痛の軽減以外のベルトの効果については所詮、
実証不可能の『このような可能性が考えられる』
というような想像論なんじゃないかと思うように
なっていきました。

『産後に骨盤が開いたまま固まる』という説にも
なんとなく???がありました。

2010年版の周産期医学という本には
このように書いてあります。

『腰仙骨神経叢の障害や恥骨結合の離開、
仙腸関節の軟骨の損傷も分娩時に起こり得るが
通常は産後8週間までに軽快する』

女性の身体は、
妊娠中に骨盤の仙腸関節や恥骨結合の
接合部分のじん帯が緩んできて出産に備えます。

でも、出産が終われば2ヶ月かけて
元に戻っていくはずなんですよね。

授乳することでオキシトシンというホルモンが分泌され、
骨盤は自然に閉じていく・・・
それが女性の体の生理的変化だと
医学書にはしっかりと明記されています。

さらに気になって調べてみると
仙腸関節や恥骨結合の接合部はしっかりと結合されているので
動いたとしても1~2mmなんだそうです。

ということは、
「骨盤が開いたまま固まる」という表現は
ちょっとおかしい、ということになります。

体幹が歪んでいると、
正面から見たときに骨盤全体がねじれて見えます。
骨盤そのものの形状は変わりません。

ということは、
骨盤矯正!って騒ぐより、
体幹のゆがみやねじれがどこから来ているのか?を
診る必要があるんじゃないかと思います。

つまり、
骨盤が歪むとか歪まないという小さな概念ではなく
骨盤の方向性や身体の使い方を診てもらうことに
意義があるんじゃないかと。

妊娠出産によって、

「骨盤は単体では歪まない、
でも、骨盤を含めた体幹のバランスは崩れる」

と、整体、カイロ、整形外科、
さまざまな立場の専門家から話を聞いて
総合的に自分なりの解釈をしていますが、
どうですかね?
(異議あり!っていう声がいっぱい聞こえてきそうやな)

ネコも杓子も『骨盤ベルト』と叫んでいた時代は過ぎ、
最近では、

某骨盤ベルトは民間療法の整体の考えによるもので
医学的に検証されたものではないため、
当院では勧めておりません

という産院も増えてきています。

現代医療、民間療法、エセ科学・・・
いろいろあって、わたしのような未熟な助産師には
何か信じていいのかさっぱりわからなくなります。

迷走しながらも
毎回、自分自身の妊娠中と産後には骨盤に断定せず
脊柱も含めた体幹の歪み(アンバランス)を
診てもらうことは欠かせませんでした。

今回、第12子の妊娠でも
整体で体幹の歪みチェックはしてもらいました。

職業柄か、多産だからか、
骨盤ベルトは5種類も持っています(^_^;)

窮屈だし、痒くなるので、
過去 11回の妊娠中は、
つけたりつけんかったりでした。

幸い、腰痛や恥骨痛もさほどなかったので
わたしの場合は骨盤ベルトは必要なかったかもしれません。

基本的に、締め付けるのはキライ。

現在、12人目妊娠中、
体幹を歪ませないように日常の姿勢を意識しようと
思っています。

骨盤ベルトですか?

妊娠中に恥骨が痛くてたまらなくなったり、
出産で恥骨結合離開が起きないかぎり、
たぶん使わないと思います。

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