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2020.07.06

国によってこんなに違う、切迫早産の治療方針

切迫早産とは、

『妊娠22w~36wに規則的な子宮収縮が認められ、
かつ子宮頸管の開大、展退度に進行を認める場合、
あるいは子宮頸管開大が2cm以上で
早産の危険性が高いと考えられる状態』

を言います。

ちなみに、
子宮収縮がないのに頚管が短くなったり柔らかくなるのは
頚管無力症といい、
切迫早産とは別モノです。

妊婦が自覚する切迫早産の具体的な症状は
1時間に4~5回以上体験する
痛みのない子宮の圧迫感、
生理痛のような痛みやおりものの増加などです。

子宮の圧迫感は、よく「おなかの張り」と表現されますが、
妊婦によって感じ方はさまざまで

腰が重たくなる感じ
おなかがキンキンに硬くなる感じ
息苦しい感じ
きゅーっとする
胃の底に何かあたる感じ
触ると盛り上がっている感じ

などと表現されることが多いようです。

37w以降41wまでの出産が正常ですが、
出産時の妊娠週数が若ければ若いほど
新生児死亡や脳性麻痺など、赤ちゃんに問題が
起きやすいことが知られているので

早産を防ぐことは周産期医療にとって
もっとも重要な課題のひとつです。

切迫早産の原因、そのほとんどは
膣内、または子宮内に入り込んだ
ウイルスや細菌の感染による炎症です。

早産することを防ぐ目的で、
切迫早産と診断されたとき、
検査で炎症反応があれば
抗生剤投与や抗炎症剤で対処します。

さらに、
子宮収縮抑制剤(張り止め)の内服・点滴や安静療法が
広く行われています。

でも実は、
欧米と日本を比較すると
切迫早産の治療方針は大きく異なっているって
ご存知でした?

わたしは20年以上前、
「切迫早産の一番の治療は安静」だと
助産学科で教わりましたが、

最近の研究では、
切迫早産治療における子宮収縮抑制剤の効果は
『最初に診断されたときから48時間に限定される』
というエビデンス(科学的根拠)が
明らかにされているんです!

合理的主義の欧米では
切迫早産と診断されたら、そこから2日間のみ
子宮収縮抑制剤を点滴投与する
治療方法がとられています。

合理主義より精神論重視の日本では、
点滴で子宮収縮がおさまったあとも
再発を予防する目的で予防的に収縮抑制剤投与を
継続する方法がとられていて

結果的に、切迫早産では
長期間の入院管理が当たり前です。

週単位、月単位で以上続ける点滴や
安静という治療方法が

・早産を防ぐ
・赤ちゃんの予後の改善に有効

とする明確なエビデンスはないのにも
関わらず・・・です!

そんな経緯があって
日本でも最近は

切迫早産への治療方針を
感染症に対する治療に加え、子宮収縮抑制剤の点滴は
欧米式の48時間~長くても1週間以内へと変更、
安静の必要はナシ!
という産院が増えてきています。

たった48時間で大丈夫なの?
安静にしなくて大丈夫?
またおなかが張って早産しないだろうか?

と不安になりますが、

日本の古典的切迫早産管理と
欧米式切迫早産管理を比較したときに
平均分娩週数、早産率、
NICU入院数に有意な変化はありません。

それが紛れもない事実です。

〝安静〟とは
健康上のさまざまな問題に用いられる
一般的な医療介入です。

広辞苑によると

「静かでおちついていること。
とくに病気療養中静かにしていること」

と書いてあります。

昔から、身体の調子が悪いと感じた時には
「横になって休む」
という方法が伝統的に行われてきました。

病態が危篤なときや進行性のときは
すべての疾患に対して安静は重要で

身体的、精神的活動によるエネルギー消費や負荷を
最小限にすることによって
各臓器への循環血液量を増やし
病気の進行を抑え、回復を促します。

ですが、
安静の定義っていうのは案外難しくて
一貫性がなく、不明瞭なんですよね~(^◇^;)

一応、安静とは
絶対安静、ベッド上安静、室内安静、病棟内安静、屋内安静、野外安静
という分類がありますが、

妊婦さんも、
医師や助産師から「なるべく安静にして」と言われても
どの程度なのか具体的な説明がないので
困惑してしまうのがオチでしょう。

切迫早産をはじめ、
分娩開始前に破水してしまう『前期破水』
子宮収縮はないのに頸管が開いてしまう『子宮頸管無力症』
子宮口を塞ぐ位置に胎盤がある『前置胎盤』
そのほか、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全など
さまざまなハイリスク妊婦に対して
安静治療が行われています。

事実、切迫早産以外のハイリスク妊娠では
安静療法は有効である
という多くの研究報告があります。

ですが切迫早産については
安静の効果はほとんどの文献で
否定的な見解が定着しつつあります。

アメリカ産婦人科学会では、
早産予防のための安静は
適切なエビデンスがないと公式発表しました。

つまり、
切迫早産防止のために広く日本で推奨されている
『安静』を支持する医学的根拠は
どこにも見当たらないのです!

それって要するに、
切迫早産妊婦に対して安静は、
無意味だってことか?!

無意味どころか、
切迫早産妊婦の安静の弊害には
血栓塞栓症、骨量の低下、心臓血管・筋肉の機能低下、
などの身体的不調や

不安、恐れ、緊張、気持ちの制御不能、
孤独、罪の意識、責任、役割遂行不全、
うつ、気分不快、といった
さまざまな精神的ストレスの感情が湧き上がり
家族や社会からの疎外感による
ストレスはハンパないと言われています。

管理入院を余儀なくされた
日本の切迫早産妊婦たちは

『赤ちゃんをおなかの中で育てることが
自分にできる仕事だから!』

と気持ちの上で折り合いをつけ
この体験をチャレンジと考え、
すべてうまくいくはず!と信じることで
妊娠期間を乗り越えようとします。

経産婦さんだと
おなかの子のこと、自分自身のことの不安だけではなく
家に置いてきた上の子のことが心配でたまらなくて
心が折れそうな日々だと思います。

みんな、無事に赤ちゃんを出産する
というゴールに向かって
妊娠継続のための努力をしていて
本当に偉い!!

このように切迫早産に対する
継続的薬物療法や安静療法に
否定的エビデンスが提示されてもなお、
切迫早産妊婦への古典的治療法はいまだに
日本のスタンダードなんですね・・・。

なぜなのか。

・安静にしても赤ちゃんに無害であること
・安静を指示しない=標準から外れるという恐れ

以上2つの理由から
古典的治療に合理性はないとわかっていつつ
子宮収縮抑制剤や安静に固執しているのが
日本の産科医療のようです・・・。

過去からの慣習に基づいて
継続していた安静という医療サービスを
中止することの困難さは、
理屈じゃ説明できない
日本の歴史的文化など、
複雑な問題を抱えているからかもしれません。

つまり、日本の切迫早産への治療は
未知の利益と既知のリスクのバランスをとりながら
あいまいさの中で妊婦にすすめる
根拠のない方針であり

そこには、専門家のリスク回避意識が
存在すると言えると思います。

一部、欧米式治療方針へと変更している産院も
ありますが、まだまだ古典的治療を
続けている施設が多いです。

エビデンスに基づいて合理的に、
少しでも妊婦さんへの負担がないよう
柔軟な頭で日本の周産期医療が今後変化していく
といいなぁと思います。

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